伝送路インピーダンス50Ω 送信機出力 50W では、完全に整合していれば、50Vrms 1A になる。ただ、SWR が悪化すると (すなわち反射が増えると)、定在波が発生する。これにより最大2倍の電圧・電流が伝送路上に発生する。

信号源が整合している場合の、定在波電圧・電流を数式で確認しておく。 が定在波の最大電圧、 は定在波のピーク電圧、 が定在波の最大電流、 は反射係数。

多重反射

多重反射、つまり信号源も負荷も整合していない場合も考えてみる。

信号源側の反射係数を に、負荷側の反射係数を にする。

は起電力、単位は V。起電力を発生させた直後の初期状態で信号源端の伝送路にかかる電圧 は、伝送路インピーダンスと信号源インピーダンス(内部抵抗)に分圧されるので、

進行波が伝送路をすすみ、負荷端に辿りつくと反射係数 で反射されるので、合成すると

反射波が伝送路を戻ってきて、信号源に辿りつくと反射係数 で再度反射されるので、さらに合成すると

これが無限に繰替えされる。このように多重反射していくと以下のようになる。

上記は時系列だが、これを発生箇所ごと、つまり進行波と反射波ごとにまとめてみる。

1ずつインクリメントされる法則性が見えるので sum の形にする。

Maxima で以下を実行して sum を整理する。 が positive か negative か zero かを訊かれるので、negative と答える。これはつまり反射係数が0よりも大きく、収束することを Maxima に伝えている。

v_i * sum( (Γ_S * Γ_L)^n, n, 0, inf) +  v_i * sum(Γ_L * (Γ_S * Γ_L)^n, n, 0, inf), simpsum;

以下のように整理される。

を展開したいので、 と、 を使って だけ残るようにする。

これでほぼ十分だが、 と SWR は互いに単独で変換できるので、SWR から求める形にしてみると、

これが多重反射の定常状態の電圧 (ただし反射係数は0より大きいこと)。ちなみに起電力 は、送信機出力 からすると、分圧されるので になる。これを代入すると

となる。

ところでここで、信号源 SWR である を 1 にしてみると、

となって、多重反射がない場合の と一致する。

計算してみるとわかるけど、信号源が整合していない場合、結局発生する初期電圧 も低くなっていくため、伝送路に発生する電圧は2倍を超えないことがわかった。

備考: 反射電力はどこで消費されるか?

信号源が完全にマッチングされているなら、信号源の内部抵抗で消費される。実際は伝送路損失もあるので、伝送路損失をひいた電力が信号源内部抵抗で消費される。

もうすこし具体的には出力トランジスタの抵抗成分で消費されて熱に変わる。送信機の出力回路を考えてみると、電力増幅トランジスタがあり、トランジスタには素子ごとにある程度決まった出力インピーダンスがある。そしてそれを50Ωに整合するトランスがある。反射電力からすると、出力端子からトランスを逆方向にすすみ、電力増幅トランジスタまで辿りつくことになる。

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