手元にある Elecraft KX3 の測定をしてみる。
(ちなみに当局の KX3 は「平成17年12月以降にアマチュア局の保証を受けて免許を受けた無線機」に該当するのでスプリアス確認保証は不要、のはず)
測定方法について
以下を根拠に測定する
- 特性試験の試験方法
- 別表第一 スプリアス発射又は不要発射の強度の測定方法
- 一 スプリアス領域における不要発射の強度の測定方法
- 二 帯域外領域におけるスプリアス発射の強度の測定方法
- 別表第三十五 証明規則第2条第1項第12号に掲げる無線設備の試験方法。「第2条第1項第12号」はアマチュア無線局のこと。証明規則第2条と種別名の対応表
新スプリアス規定
測定結果を提出データとして使うためには測定器(スペアナ)が1年以内に校正されていなければならないので、現実的に個人でこれを行うのは難しい。
しかしアマチュアであれば JARD に対してスペアナ(校正済みでなくてもよい) の測定結果をもって保証してもらうという手がある。
測定周波数
アマチュアの場合広い帯域を一括で免許をうけるので、どの周波数を使うのかと思うが、割り当て帯域幅によって異なり、帯域幅が1MHz以下なら指定周波数 (免許状に書いてある、周波数帯域の中央) で測定をすれば良いらしい。別表第35
ただし電波形式は免許を受けるすべての形式で行う必要がある。
具体的な測定方法
スプリアス領域における不要発射等の測定方法の陸上関係無線設備(一般)にしたがう。
スペアナの設定のうちRBW, VBW, 検波モードが必ず指定された通りになっていることを確認すること。
スプリアス探索時
- 掃引周波数幅 (基本周波数別に別途規定)
- 分解能帯域幅 (RBW): 各スプリアス周波数毎に選択
- ビデオ帯域幅 (VBW): RBW の等倍から5倍程度
- 検波モード: ポジティブピーク
- 掃引時間: 測定精度が保証される最小の時間
- 基本波の中心周波数か 2.5Bn (Bn=必要周波数帯幅) 以上離れたスプリアス成分を探索する
- 探索した各スプリアス成分の振幅値が許容値以下の場合は、探索値を測定値とする
- 許容値を超えた場合は振幅測定行い、平均値を測定値とする
スプリアス振幅測定
探索したピークに周波数をあわせて振幅をはかる
- 中心周波数: スプリアス周波数
- 掃引周波数幅: 0Hz
- 分解能帯域幅 (RBW):
- 9kHz 〜 150kHz : 1kHz
- 150kHz 〜 30MHz: 10kHz
- 30MHz 〜 1GHz: 100kHz
- 1GHz〜: 1MHz
- ビデオ帯域幅 (VBW): RBW の等倍から5倍程度
- 検波モード: サンプル
- 掃引時間: 測定精度が保証される最小の時間
実際にやってみる
面倒なので 40m (7100kHz) の CW だけでやる。変調をかけ最大送信電力にするということになっている。できるだけ厳しい条件でやるという意図だと思われるので、短点連続(帯域が最大)でやってみる。技適の手順だと25ボーとか、外部変調装置がある場合その最高速度みたいな手順みたいだが…
10W 7100kHz の場合、帯域外領域のスプリアス発射強度の許容値は 50mW (17dBm) 以下かつ、基本周波数の平均電力より40dB低い値。スプリアス領域での不要発射の強度の許容値は 50μW (-13dBm)以下。
- 10W = 40dBm
- 30dB 50W のアッテネータで 10dBm (0.01W)
- 10dB 2W のアッテネータで 0dBm。これをスペアナに入力
必要周波数帯 (BN) は基本的に占有周波数帯幅の許容値と同値になるので CW の場合は 0.5kHz。スプリアス領域 は 2.5BN 離れた領域なため、7100±1.25kHz の外側がスプリアス領域。
7MHz の場合、基本波が9kHz〜100MHzのケースのためなのでスプリアスの測定範囲は 9kHz〜1GHz。ただし10倍高調波まで見る。
帯域外領域
帯域外領域の測定を勘違いしていました。別表第一 スプリアス発射又は不要発射の強度の測定方法 によると帯域外領域は無変調で行うようです。
ということで撮りなおしました。(Ref Offset を40dBいれているので、直読できるようになってます)
以下の画像はキーイング状態なので正確な測定ではないです。
一旦必要周波数帯と帯域外発射を見る。帯域外発射の範囲は 7100±1.25kHz なので、7100kHz を CENTER にして 2.5kHz SPAN で見てみる。
「帯域外領域のスプリアス発射強度の許容値は 50mW 以下かつ、基本周波数の平均電力より40dB低い値。」基本周波数の平均電力より -64dB 低いので後者の条件は達成、10W は 40dBm なので、帯域外領域の発射強度は -24dBm。50mW は約17dBmなので達成している。
スプリアス領域
上下にあるので、下から見ていく。
9kHz〜150kHz
下側 RBW=1kHz の範囲
なにもなさそう。
150kHz〜7100kHz
下側 RBW=10kHz の範囲
なにもなさそう。
7100kHz〜30MHz
上側 RBW=10kHz の範囲
高調波が出てる。40dBm -62 なので -22dBm。50μW (13dBm) 以下なので合格
30MHz〜70MHz (基本波の10倍)
RBW=100kHz の範囲
見つからず。
「ITU-R 勧告SM.329-10における指針」に従って、基本周波数の10倍高調波まで見れば良いことにはなっている。つまり 7MHz なら 70MHz まで見れば十分なはず。
スプリアス振幅測定
スプリアス強度が許容値を超えていた場合はどのぐらい超えたかを確定させるため、スプリアス振幅測定を行う必要がある。
今回は超えていないがこれもやってみる。14.2MHz を CENTER にして、ゼロスパンにする。
ref
- 帯域外領域とは? https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/others/spurious/files/sanko002.pdf
- https://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/72081000006.html
- 総務省の測定方法例: https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/others/spurious/files/sanko003.pdf
- アンリツのスペアナ基礎: 測定方法で必ず指定される項目が便利 http://dl.cdn-anritsu.com/ja-jp/test-measurement/files/Product-Introductions/Product-Introduction/ms2830a-jz4100.pdf
- 技適の測定方法 https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/equ/tech/test/index.htm