NanoVNA は USB-CDC による通信をサポートしていますが、ここが無線化すると(特にアンテナ調整の場合は)便利なので、コンセプトを試してみました。無線化といってもいろいろやりようは考えられますが、今回はシリアル通信を BLE SPP にのせかえる方法としました。
シリアルポートをMCUから引き出す
USART1_TX USART1_RX を MCU (STM32F072CBT6) から引き出します。中華 NanoVNA では NC になっている、それぞれ PA9 (USART1_TX) PA10 (USART1_RX) です。LQFP48 なので PA9 は 30ピン、 PA10 は 31ピンになります。
かなり細かいので面倒ですが、このピッチならギリギリなんとかなります。あまり接続部に負担をかけたくないので、ポリイミドテープで一旦うけています。
これをそのまま BLE 変換器に繋いでもいいのですが、デバッグがしにくいので一旦安定したところに繋ぎます。JTAG のピンヘッダがある部分に曲げたピンヘッダを追加して置いて、固定しました。
シリアルポートの有効化
NanoVNA のコード側の対応も必要です。
このパッチによって有効化しています。USB を接続した状態で電源をONにした場合は USB-CDC のシェルを有効にし、そうではない場合はシリアル経由のシェルを有効にします。
BLE UART 変換
手元に ESP-WROOM-32 が余っていたので、これを利用してみました。一旦雑に配線して変換プログラムを書きこんで、不要な配線をとって実際に組みこみます。
コードはこんな感じです。あまり好ましいとは思いませんが、RF 回路の突発電流で brown out detection (低電圧検出) にひっかかることがあるので検知を切っています。
#include "BluetoothSerial.h"
#include "soc/soc.h"
#include "soc/rtc_cntl_reg.h"
BluetoothSerial SerialBT;
void setup() {
WRITE_PERI_REG(RTC_CNTL_BROWN_OUT_REG, 0);
Serial.begin(115200);
SerialBT.begin("NanoVNA");
}
void loop() {
if (SerialBT.available()) {
Serial.write(SerialBT.read());
}
if (Serial.available()) {
SerialBT.write(Serial.read());
}
}
デバッグの様子です。
組み込み
ピン名がわかりやすいからという理由で、ESP-WROOM-32 のシールド側を下にしています。シールドにはポリイミドテープを貼って念のため絶縁しています。これを無理矢理 STM32 の上に両面テープで貼りつけて固定し、配線しました。
一応これで納まりました。
懸念点
ESP-WROOM-32 の消費電力が非常に多いです。突発的に100mAぐらい平気で流れるので、本体の消費とあわせると 3.3V レギュレータの定格 (200mA) を若干オーバーしているかもしれません。
データが欠落します。BLE なのと、CTS/RTS を無視しているので仕方ないですが、データの欠落が結構起こります。
やっておいてなんですが、この方法は大変な割に微妙なので、ナシかなと思いました。古いスマフォでUSBを中継したほうが楽だし確実そうです。
9600bps ぐらいまでボーレートを落とせばデータ欠落はなくなるようです。が、本当に遅いのでやはり厳しいです。57600 だと少し欠落する。
BLE ではなく普通の Bluetooth SPP にすればいいんですが、普通の Bluetooth は Web Bluetooth API から呼べないのでやる気になっていません。