概要
連続信号をADCでサンプリングする場合、前段にローパスフィルタが必要だが、それをどう設計したらいいかわからない、という話。
ローパスフィルタの設計
ADC する場合、サンプリング周波数の2分の1 (ナイキスト周波数) 以上の周波数はローパスで完全に遮断する必要がある。さもなければ折り返し雑音が入り、これは後段では正常なデータと区別がつかないので対処しようがない。
ある周波数で「遮断」するというのは、その周波数において、分解能ないしノイズレベル未満まで減衰するということ。最大 1V の信号を 10bit ADC (1024段階)する場合、0.97mV 未満であれば分解能未満になる。この場合 20 * Math.log10(1024) = 60.2dB 減衰すれば、遮断したといえる。
そしてこの場合、サンプリング周波数が 10kHz であれば、5kHz 時点で 60.2dB 減衰させるようにフィルタを設計する。次に、どの程度まで完全に通過させるかでフィルタの性能 (次数) が決定する。当然通過帯域がナイキスト周波数に近ければ近いほどADCの性能を生かせるが、そのためには性能の良いフィルタが必要になる。
フィルタの特性にはいくつか種類がある。(同じぐらいの回路規模での比較)
- バターワース特性
- 通過帯域内はフラットだが、減衰傾度がゆるい
- チェビシェフ特性
- 減衰傾度はきついが、通過帯域内にリプルが発生する
ローパスフィルタの次数はそのまま減衰傾度になる。1次のバターワースフィルタは周波数が倍で出力が半減 (=-6dB/octave)。次数が高いほど減衰が強くなる (2次=-12dB/octave, 3次=-18dB/octave)。高い性能のフィルタが必要な場合は高次のフィルタ (部品点数の増加) が必要になる。
ADCの前段に入れる場合、できる限り急激な減衰が欲しくなるので、まずチェビシェフを検討することになる。そしてチェビシェフ特性の場合、リプルがどの程度発生するかというのも設計で考慮する必要がある。もしリプルが分解能ないしノイズレベル未満にできれば、それは問題にはならない。
10bitの場合リプルは 20 * Math.log10(1 / (1 - 1/1024.0)) = 0.0085dB 未満であれば完全に問題にならないが、リプルの大きさと減衰傾度はトレードオフの関係にある。
回路構成などによっては妥協する必要がある。妥協点は
- 分解能
- 通過帯域
そして、フィルタの実現方法として
- パッシブ型
- CR, LCR のみ
- アクティブ型
- オペアンプを使う
がある。パッシブ型は減衰のみしかできない。アクティブ型は同時に増幅もでき、特性を改善できる、という特徴があるらしい。あとどうも L を含む回路は好まれないらしく (誤差が多いから?) あまり使われないみたいだ。
わからないこと
- 応答特性
- 位相変化特性
フィルタ特性としてこれらもでてくるけどどのように影響していくるかわかってない。
また、ADC の場合で、特に例えば後段で FFT する場合、減衰傾度をゆるやかにしてデジタルでフィルタ特性にあわせたレベル補正をかけたり、という小手先テクニックも使えそうだけど、それがうまくいくかわかっていない。