RGB等色関数のグラフではRGBの値が負の値をとることがある。つまり3原色ではこの色を再現できないということなのだが、意味がよくわかっていなかった。なぜ負になるのか? なぜ再現できない色が生じるのか? 改めて納得できるまで調べてみた。

短い結論

錐体細胞の感度のうち L錐体 と M錐体 の感度が近いため、RGBのうち特にG(緑)は純粋に緑とはみなせないから。

等色関数とは?

単一波長の光 (例えばレーザーのような) と、混色光 (RGB光) を比較して、どう混色すれば単色光と「同じ」に見えるかを関数化したもの。

人間の目の網膜のうち、色を感じる細胞である錐体細胞は3種類しかない。このため単色光で3つの錐体細胞が受ける刺激値を、3つの波長からなる混色光で再現できるならば、この単色と混色の光は人間の目には同一に見える (区別ができない)。

RGB等色関数とは以下のようなものである。ここでは 1931 CIE RGB 等色関数とした。このときの RGB の波長はそれぞれ 700nm/546.1nm/435.8nm。

一部の領域で R が負の値になることがわかる。これはBやGをどのように混色しても、この波長域の色を再現できず (具体的には彩度が足りない)、単色光のほうにRを足して等色したことを表している。

すなわちマイナスが含まれる領域はRGBで再現できない色となる。

備考 1931 CIE RGB 等色関数

上のグラフは厳密には 1931 CIE XYZ 等色関数を CIE RGB に変換するマトリクスをかけて求めたもの。XYZ 等色関数は LMS Fundamentals から変換した「生理学的に妥当な」ものが新しいものとしてあるが、これを CIE RGB に変換するとそれぞれの原色光のとき他の原色の値が0にならない。

XYZ から CIE RGB (白色点は等エネルギー点である E) への変換は以下の通り

人間の網膜細胞の感度

色を感じる細胞である錐体細胞には、L錐体 (Long=赤) M錐体 (Medium=緑) S錐体 (Short=青) と波長別に3つの種類がある。暗所で働く杆体という細胞もあるが、これは色には関係しないので今回は無視する。

それぞれの錐体にはRGBに波長のピークがあるが、実際の感度では重なりあう領域も大きい。特にL錐体とM錐体はかなりピークが近く、感度も似ている。これは進化の途中で一度M錐体相当のものを失い、再度L錐体から変異する形で獲得しなおしたという経緯があるためといわれている。

RGBの三原色で作り出せない単色光

錐体の感度と、等色関数を並べて、CIE RGB の原色光の波長に線をひいてみた。原色とは前にも書いた通り

  • 435.8 nm 青
  • 546.1 nm 緑
  • 700 nm 赤

青と緑の混合色で青緑の単色光を作ろうとしても彩度が足りないので再現ができないのはなぜか?

LMS のうち L錐体 と M錐体は感度ピークが近いことから、原色の緑とした 546.1nm の単色光は実は M錐体だけではなく、 L 錐体も反応させてしまう。例えば 500nm の単色光で のL 錐体での感度よりも、546.1nm でのL錐体の感度のほうが高いため、錐体への赤みの刺激が相対的に多くなり、純粋に青緑の色ではなくなってしまう。すなわち彩度が下がる。

LMS Fundamentals のグラフ 546.1nm のL錐体の感度は、500nm のときのL錐体の感度よりも大きい (赤みが強い)。

言い換えると、536.1nm は純粋にM錐体を刺激できるような「緑の光」ではないため、これを青と混色しても高彩度の青〜緑は再現できない。

青〜緑の波長領域のL錐体の感度が、546.1nmでのL錐体の感度よりも低い場合、その波長は青と緑の混色光では再現できないことになり、Rは負の値をとる。

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