基準電圧源

Aliexpress でいくつか買ったやつで考える。

AD584JK


Aliexpress で売っている AD584JH 基準電圧源

これはデータシートのスペックだけ考える

  • 温度係数 30ppm/℃ (0〜70℃)
  • 長期安定性 25ppm/1kH (1000時間)

10V であれば

  • ±0.3mV/℃
  • 0.25mV/1kH

LM399H


Aliexpress で売っている LM399 基準電圧源の回路

LM399 自体のスペック

  • 温度係数 2ppm/℃ (0〜70℃) (typically 0.3ppm/℃)
  • 長期安定性 8ppm/√kH

この実装の非反転増幅回路の抵抗のスペックは不明なので、ここでは ±10ppm/℃として考える。オペアンプの非反転増幅回路の温度ドリフト で求めたように

  • 約6.2ppm/℃

非反転増幅に使われている LT1001 のスペック

  • 入力オフセット電圧の温度係数 1.0μV/℃
  • 増幅率が約1.45倍なので 1.45μV/℃

で、単純に合計すると

  • 温度係数 8.2ppm/℃ ±1.45μV/℃

10V であれば

  • ±0.08345mV/℃
  • 0.08mV/√1kH

マルチメータ

上の基準電圧源をいくつかのマルチメータで測ってみる。といってもあまり確度が高いのは持ってない

一般的なハンドヘルドデジタルマルチメータ(1000円〜8000円)の電圧レンジの測定確度はよくて4桁±0.5%ぐらい。中級機 (9000円〜数万円)で 5.5桁±0.05% ぐらい。非常に高精度のもの (10万円〜) で6.5桁±0.004%

温度係数は安いものだと規定されてないものがほとんど (あんまり意味ないんだろう)。

TR6846

アドバンテストの古いDMM。4.5桁 (32999)。300mV〜1000V の範囲の測定確度は ±0.04%±5d (400ppm)、温度係数は ±0.004±0.2d (40ppm)

基準電圧源と温度ドリフト・経年ドリフト

基準電圧源に書いてある数字は信用するとして (つまり基準電圧源のトレランスは無視する)、この結果に対しどの程度の温度ドリフトと経年ドリフトがあるかを考える。

CD771

三和電気計器 SANWA デジタルマルチメータ バックライト搭載 CD771 - 三和電気計器

三和電気計器

3.0 / 5.0

サンワの安めのDMM、3999カウント ±0.9%±2d

UT210E

 -

3.0 / 5.0

安いクランプ型のマルチメータ。直流電圧は普通にテストリードで測れる。2000カウント ±0.7%±3d

DT10B

秋月で売ってる手帳型のマルメータ。3999カウント ±0.8%±3d


ref.

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  3. 基準電圧源とマルチメータの精度

オペアンプの増幅率は抵抗比なので、2つの抵抗が同じ温度係数を持っていれば比は変化せず、温度によるドリフトはない。実際は個体によってTCRの傾向は変わり ±10ppm の抵抗であれば最悪のケースでは +10ppm と -10ppm の抵抗を組合せた場合になる。

非反転増幅回路のゲインは、接地抵抗を 負帰還抵抗を とすると

それぞれの抵抗の相対誤差を とすると最悪のゲイン差は

出力の相対誤差は

が 20k、 が 9k でTCR が ±10ppm/℃なら、出力の温度ドリフトの最悪値は約±6.2ppm/℃ということになる。

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  3. オペアンプの非反転増幅回路の温度ドリフト


こういうやつ、2000円ぐらい。シールドケースに入っているが、シールドケースの上側はすぐ外すことができる。シールドケース内に精度部品が配置されるようになっているので、ノイズ低減と温度変化低減を狙っているのかもしれない。

LM399H と LTC1001 が使われている、LM399 のデータシートに書いてあるリファレンスデザインっぽい。

ジャンパで出力電圧を変更できるようになっており、以下の通り設定する。ややこしい

気になったので回路図を起こしてみた。基本的には LM399 のリファレンスデザインと同じ。オペアンプのゲインは 1.45 で固定、入力の 6.95V の基準電圧を分圧することでそれぞれの設定電圧を出せるようになっている。

最初、計算があわないなーと思ってたら 1802 と書いてある抵抗のところ、2段重ねになっていた。下の抵抗の表記は見えないが 1802 らしく、合成で 9kΩ にしているっぽい。なんでややこしいことしてるかは謎

一応、出力電圧に関係ある部分には4桁表示の高精度抵抗が使われている雰囲気がある。精度に関係ない 7.5kΩ は普通の抵抗。

ちなみにヒーターのせいか結構消費電力が激しい。最大200mA、温まってくると20mAぐらいまで下がる。データシートから読むと安定するまで10秒ぐらいは最低でも待ったほうがよさそう。

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  3. Aliexpress で売っている LM399 基準電圧源の回路

1200円ぐらい

https://www.analog.com/media/en/technical-documentation/data-sheets/AD584.pdf

AD584JH は 30ppm/℃ (0〜70℃) 25ppm/1000時間。AD584 の良いところは特に外付け部品がいらず、AD584内部にトリミングされた分圧抵抗が含まれるところ。スペックを以下の通りで、そのまま外部出力となっている。

  • 2.5V ±7.5mV 0.3%
  • 5.0V ±15mV 0.3%
  • 7.5V ±20mV 0.27%
  • 10V ±30mV 0.3%

このボードは校正済みらしい測定器の測定結果が4桁書いてあり、今回はそれぞれ以下の通り (括弧は呼び電圧に対する絶対誤差と相対誤差)

  • 2.498V (-2mV -0.08%)
  • 5.001V (+1mV +0.02%)
  • 7.498V (-2mV -0.027%)
  • 10.001V (+0.1mV +0.001%)

この測定値は何度で測ったか不明。30ppm つまり 30e-6/℃ なので、±10℃ぐらいの誤差を見込むと0.03%、10Vで±3mV程度。このぐらいの誤差は観測されてもしょうがない。

基板に載っている電池ホルダは 23A という単5サイズの積層12V電池用。ヨドバシだとパナソニック LRV08/1BP、秋月だとゴールデンパワー製 A23 というのが買える。50mAh ぐらいしか容量がない。

AD584 自体は 1mA、基板上に LED があり 5.1kΩを介して電流が流れ、これが 2.4mA。電圧が下がってくることも考えると、電池1本で10時間程度使えたらいいほうか。といっても普通に外部入力することもできる。

ただ、電池が使えるといっても 12V だと仕様上若干電圧が足りない。出力電圧 +2V 以上加える必要がある。

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