背景
KiCAD は1つのプロジェクトにつき1つのボードしか作れない。小さな基板であれば1つの基板にVカットを入れるでいいが、どうしても複数ボードとして設計したい場合に困る。
複数プロジェクトにして回路図をわけると、今度はこの回路図間でコピペが動かないという問題が発生する。KiCAD はプロジェクト間のブロックコピー・ペーストができない。
階層シート
KiCAD は階層シートという、回路図については複数ページに分けて書く機能をサポートする。これは部分的に別の .sch 回路図ファイルとして分離して、プロジェクトルートの回路図から参照するという形をとる。名前の通り、これはツリー上にすることができる。
考えたやりかた
考えかた
- 全体を管理するプロジェクトとルート回路図を作る
- 各基板ごとに階層シートとして回路図ファイルを分離する
- 各基板ごとに別のプロジェクトとルート回路図を作る
- 各基板のルート回路図から全体を管理するプロジェクトの階層シートを参照する
これで原理的には全体を管理するプロジェクトのルート回路図を開いて各階層シート(モジュール)に入ったり出たりして図を書け、各基板ごとのプロジェクトのルート回路図を開けば各基板ごとだけのネットリストを吐ける。
実際のオペレーション
ルートに何も置かず、それぞれのボードごとに階層シートとして、まず全て設計する。このとき作る回路図を Root.sch とする。階層シートはそれぞれ _module_a.sch とか、あとあと被らないような命名にしておく。
全体ができたら (できる前でもいいけど)、Root.sch をモジュール数分だけコピーする。これは KiCAD 上ではできないので適当にターミナルとかでやる
$ cp Root.sch ModuleA.sch $ cp Root-cache.lib ModuleA-cache.lib
cache.lib もコピーしないとダメ。
この状態で KiCAD のプロジェクトビューを更新すると、コピーした回路図が見えるので開く。開いてから保存すると勝手に ModuleA.pro が作られて別プロジェクトとなる。ModuleA.sch ではボードに実装したい階層シート以外を削除する。ModuleA.sch はこれで1つのボードに対応する回路図となる。
他のモジュールも同じようにコピーして必要な階層シートだけを残す。
結果的にできる構造
Root.sch _module_a.sch _module_b.sch ModuleA.sch _module_a.sch ModuleB.sch _module_b.sch
それぞれキャメルケースのファイル名の回路図がルート回路図で、_ から始まるスネークケースのファイル名の回路図が階層化回路図になっていて、上記のような参照関係になる。
こうすると、Root.sch で全体を見ながら各階層化回路図に変更をかけたことが、個々のモジュール用回路図にも反映される。ネットリストはモジュールごとの回路図から生成するので、これでボードごとのネットリスト出力ができる (Root.sch に対応する kicad_pcb ファイルは作らない)。
ワークフロー
基本的に Root.sch 開いた状態で階層化回路図を編集する。
これで保存をして閉じて、ModuleA.sch を開くと、編集が反映された状態になっている。この状態でフットプリントの関連付け、及びネットリスト出力をして pcbnew すると、該当する基板の部品だけを出せる。
ネットリスト・pcbnew した後は以下のようになる
Root.sch はあくまで全体管理用なのでネットリストとかは出さない。
.sch 間のコピペ
コピペ対象の回路図が階層化回路図になっていなければならない。なので、全体を見ながらモジュールの構成をしたいときは Root.sch を開いてそれぞれコピペ(ブロックを保存)することになる。
他に方法はないのか
わかりません。普通に全部を吐きだしたネットリストから、うまいこと各階層シートごとのネットリストだけ分離するようなスクリプトを書けばもっと楽に管理できるかもしれません。
標準のネットリストファイルはS式なんですが、ちょっと見た感じだと簡単にはできない気がしました。