工具用のバッテリーを流用する場合、以下のようなメリットがある。
- 出力電流がそれなりとれると期待できる
- 入手性が良く、性能が安定している。サードパーティの互換バッテリーがあったりもする
- 充電時間が短い
工具用バッテリーは工事現場で使われるようなものなので、モバイルバッテリーのようなものより要求仕様が高い。サイズも容量にしては大きめで価格も高めだが汎用性が高い。
マキタの 10.8V リチウムイオンバッテリーシリーズには BL1015 (1.5Ah) BL1040B (4Ah) がある。Ah 表記だが、10.8V での Ah だとすると、それぞれ、16.2Wh、43.2Wh になる。このバッテリーは一般向け充電掃除機で使われているので工具以外でも馴染がある人は多いだろう。
ニッケル水素 1900mAh 1.2V 10本直列だと 22.8Wh なので、1.5Ah のモデルはちょっと少なめに感じる。が、リチウムイオン電池は重量効率が良いのと、工具用バッテリーは上記の通り充電器が良くできていて充電速度が早いので、これを汎用的に使えると便利でしょう。
みてみるとバッテリー側には5端子ある。工具側には3端子。残り2つは充電器用っぽい。バッテリー側の表面をよく見てみるとプラスとマイナスの表示が書いてあり、普通に出力が常にされている。おそらく工具用にはプラス・マイナス・サーミスタの3端子だと思う。充電器用についてる2つの端子は何かわからない。(バッテリーの充電バランス用かもしれない)
マキタのリチウムイオンバッテリーは 10.8V のほか、 36V 18V 14.4V 7.2V のラインナップがある。14.4V 以上は価格が非常に高くなり、7.2V は小型工具しかない。基本的に家庭向けには 10.8V 一択に見える。10.8V には差し込み式のバッテリーもラインナップされてるが、スライド式のほうが良い(接点不良が起きにくいので)。
10.8V でもそこそこ電圧が高いので、もしさらに DC/DC コンバーターをつけてもスイッチング電流はそれほど大きくならずにすむ。
10.8V スライド式バッテリーを汎用的に使う
当然メーカー推奨の方法ではないが、バッテリー端子を直接引き出しで独自に使う。
バッテリーに合致する端子を作って、任意の汎用コネクタに変えることを考える。とりあえずは手元の無線機 (KX3) 用に DC φ 2.5mm センタープラスコネクタとして引き出す。
導体を扱うので 3Dプリンタだけではどうにもならない。接点として、今回はt=1mmの SUS430 の板を使うことにしてみた。SUS430 はステンレスの中でフェライト系というもので、比較的加工性が良いらしい。けど真鍮とかのほうがもっと加工性良さそうだし導体抵抗的にもいいかもしれない。
SUS430 板は CNC ミリングで加工した。あまり複雑な形にせず、最悪手で加工しても作れるような形とした。
端子を保持してスライドしてバッテリーと接続する部分は3Dプリンタで作成した。何度か出力しなおしてうまくマッチするようにした。
パーツは2つに分かれていて、ショート防止のため金属の露出部分を減らしてある。
Thingverse に STL をあげた。https://www.thingiverse.com/thing:2841303
電圧
リチウムイオンバッテリー直結だと思うので、素子素性そのままだと思うが念のため。
リチウムイオンバッテリーは1セルあたり3.6V。10.8V は3本直列ということになる。
公称3.6Vで、満充電4.2V、放電ぎりぎりでは2.75V 付近まで下がる。3本直列なら 8.25V〜12.6V。実用的には下限を9Vぐらいにしたほうが安心。
- 充電直後 12.43V (セルあたり4.14V)
- 放電後 (マキタの掃除機でLEDが点滅するまで) 10.3V (セルあたり3.43V)
放電直前の電圧はそのうち追試
どれぐらい電流がとれるか
無線機に直結できるように配線してみたので、KX3 で実際に送信してみたところ、充電直後で 2A 程度は全く問題なくとれるようだった。
過電流保護がどこでかかるのか興味が湧いたので、電子負荷でさらに負荷をかけてみることとした。4.3Aまで出ることがわかった。