最初に知ること

  • 周波数変調は、入力信号 (変調信号) の振幅が周波数の変化に変わる
    • 変調後の最大周波数偏移は入力の振幅によって決まる
    • 振幅の最大値のときの最大周波数偏移は場合によって異なる
      • 広帯域FM: ±75kHz (FM放送)
      • 広帯域FM: ±5kHz (アマチュア FM)
      • 狭帯域FM: ±2.5kHz (アマチュア FM-N)

「振幅の最大値のときの最大周波数偏移」と「ある入力に対する最大周波数偏移」で若干ややこしいので注意。単に「最大周波数偏移」といったときどっちのことを言っているか気をつける。

スペアナで見る FM スペクトラム

1kHz の正弦波で変調した場合、キャリアを中心にして、1kHz ごとにピークが立つ。各ピークのレベルについては後述

入力信号周波数を変化させるとこのように変化する。ピークの幅と、ピークの振幅それぞれが変化する。

変調指数

ある周波数の入力信号 を変調して、最大周波数偏移が だった場合、変調指数 は以下のようになる。

変調指数には以下のような特徴がある

  • 入力信号が大きくなるほど、高い変調指数になる (Δf は入力信号振幅が大きいほど大きくなるので)
  • 入力信号周波数が低いほど高い変調指数になる
  • 変調指数は側波帯のピークの数と対応している。変調指数 m + 1 番目の側波帯ピークまでで電力の99%が伝達される
  • 変調指数が高いほどSNRが良い

各ピークの振幅

出力のキャリア周波数の振幅及び、側波帯の各ピークの振幅は、変調指数をとる第1種ベッセル関数にしたがう。

縦(y)軸が振幅で、横(x)軸が変調指数。J(n,m) は変調指数 m のときの、側波帯ピークn番目(ただし0はキャリア)の振幅をあらわす。負の値が出るがスペアナで観測できるのは絶対値。

変調指数が一定の値、例えば 2.4 とかになるとキャリアの振幅は0になる。


入力=500Hz (最大周波数偏位=1200Hz)


入力=1000Hz (最大周波数偏位=2400Hz)


入力=1500Hz (最大周波数偏位=3600Hz)

どれも最初のキャリアゼロにあわせているので変調指数は2.4。結果、最大周波数偏位・入力ゲインが変わる。変調指数が同じなので、各ピークの大きさはどれも一致するはずだが、実際は出力バンドパスフィルタとかの影響で帯域が広くなると誤差が増える。

スペクトラムから最大周波数偏移を知りたい場合 (ゼロキャリアをさがす)

最大周波数偏移は入力信号振幅によるため、同じ振幅を持ち、キャリア周波数振幅が0となるように入力信号周波数を加減する。キャリア周波数振幅が最初に0となったとき m=2.4 なので、入力信号周波数 * m で最大周波数偏移を求めることができる。

ただしこの方法は、入力信号周波数を変化させても、無線機内部で振幅が変化しないことを前提としているので、イコライザやコンプレッサーなどがあり、周波数応答がフラットではない場合は成立しない。

スペクトラムから最大周波数偏移を知りたい場合 (瞬時周波数偏位を直接読む)

RBWを十分に大きくして、FM波全体を見るようにする。この状態で Max Hold / Min Hold して偏位の最大周波数と最小周波数をさがす。少し測定に時間がかかるのと、スペアナのスイープタイミングと入力信号周波数が互いに素になっていないと最悪いつまでたっても結果がでないのが欠点

マーカーを2つ使い、Max Hold / Min Hold それぞれのトレースで同ゲインにくるように調整する。そのときの周波数の値を読んで、差を計算する。これが最小と最大の周波数偏位になる。(51008700 - 51004100) = 4600 なので、最大周波数偏位はこの半分の ±2300Hz になる。この画像の場合は信号周波数が 1000Hz なので、変調指数は 2.3。

特定の変調指数になるようにゲインを調整したい場合

例えば 1000Hz で変調指数 3.5、つまり最大周波数偏位を3500Hzにしたい場合。これは変調指数から振幅を求めて、近くなるようにゲインを調整するのが一番簡単。


ベッセル関数を使って各ピークを求めて、それにあうようにする。

これでやって調整して、上記の方法で、最大周波数偏位を測定しなおすとより良い。

(51009800 - 51003050) / 2 = 3375 (最大周波数偏位)。3375 / 1000 = 3.375 (変調指数)。なかなかぴったりにはいかない…

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の続き AM(A3E)。帯域幅は6kHz。疑似音声発生器 を使う。

測定方法について

以下を根拠に測定する

変調度

1kHz で変調度 60% の状態で、同レベルの疑似音声を入力するということなので、まず1kHzで変調度 60% の状態を作る必要がある。

変調度 をスペアナで求める場合、搬送波振幅 (電圧) 側波帯振幅 (電圧) とすると

または、搬送波電力 、側波帯電力 とすると

1kHz で変調度 60% なら、 。つまり搬送波電力に対して 側波帯電力が -10.5dB になるようにゲインを調整する。

0スパンにしてうまく設定すると変調信号を表示できる。この結果を使っても変調度を求められる。ただトリガをうまくかけられないといけない。

帯域外領域

帯域幅は6kHzなので、±15kHz が帯域外領域

無変調で搬送波だけの状態で見る。

スプリアス領域

RBW=1kHz 9kHz〜150kHz

RBW=10kHz 150kHz〜30MHz

前回まで側波帯ごとにわけて見てたが面倒なので一括で見る

-21dBm の高調波。50μW (13dBm) 以下なので合格

RBW=100kHz 30MHz〜71MHz


ref.

https://www.hakodate-ct.ac.jp/~moriya/class/5SCE_Exp/text05-1.pdf
https://dl.cdn-anritsu.com/ja-jp/test-measurement/files/Technical-Notes/White-Paper/Guide_to_SpectrumAnalysis_J.PDF

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  3. スペアナでスプリアス測定してみる3 KX3 AM の測定

スペアナでスプリアス測定してみる (KX3 CW) | tech - 氾濫原 というのを書いた。SSB でさらに測定してみる。途中で「帯域外領域」の測定について勘違いに気付いたため、前のエントリも修正している。

測定方法について

特性試験の試験方法 を参照するのが一番正しそうなので、少し細かくみていく。

「スプリアス発射又は不要発射の強度の測定方法については、別表第1に定める方法」となっている。ただし、平成16年総務省告示第88号によって、「スプリアス領域における不要発射の強度の測定を行う周波数範囲」が緩和されて定義されているので、こちらも見る必要がある。

別表第1がスプリアス測定の方法なのだけど「占有周波数帯幅の測定と同じ状態」として他の資料を参照している。

「占有周波数帯幅の測定と同じ状態」は特性無線設備の種別ごとに定義されている。アマチュアの場合は別表第35に全ての変調方式について記述がある。特に「別表 各電波型式の変調条件」が大事。

擬似音声発生器

「擬似音声発生器は、白色雑音をITU-T勧告G.227の特性を有するフィルタによって帯域制限したものとする。」なのでまた別の規格を見る必要がある。G.227 : Conventional telephone signal

この装置は少し前にこれのためにつくった ブラウザで動く擬似音声発生器 (ITU-T G.227 フィルタ) | tech - 氾濫原。yak-shaving...

手順

⑴ 変調信号は擬似音声とする。
⑵ 擬似音声の変調入力は、正弦波の1,500Hzで空中線電力が飽和レベルの80%程度となる変調入
力電圧と同じ値とする。

まず正弦波 1500Hz を入力し、飽和レベルの80%程度となるようにマイク入力ゲインを調整する。

飽和レベルはSSBの場合送信機の尖頭電力のことなので、設定した出力電力と同じになる。つまり10W出力で飽和レベル80%なら8Wになるように調整する (0.8 = 1dBひく)。

「擬似音声発生器」は電圧がひとしくなるように作ってあるので、そのまま疑似音声に切り替えれば状態が整う。

10W 出力で計測する。40dBm。1500Hz 正弦波のとき 39dBm に出力を調整する。スペアナの前に40dB アッテネータをいれている。ところで今回はスペアナに Ref Offset の設定があることに気付いたので、前もって 40dB 分のオフセットをつけて、測定値を直読できるようにしている。

帯域外領域


(再掲)

無変調で測定する領域だが、SSBの場合は搬送波がないため実質的に意味がない (搬送波の綺麗さを見る試験のようだ?)。

SSB の 占有周波数帯幅の許容値 は 3kHz。スプリアス領域 は 2.5BN 離れた領域なため、± 7.5kHz の内側が帯域外領域、外がスプリアス領域。

7100kHz を帯域の中心にしたいので、LSB モードの場合は 7101.5kHz に送信周波数をセットする。これで 7098.5kHz より下、7101.5kHz より上が帯域外

1500Hz 正弦波入力

なぜ 1500Hz?と最初思ったが、帯域幅が3000Hzなので、真ん中にくるようにですね。

無音での場合

つまり入力雑音のみの変調をかけた場合どうなるか。混乱しないでほしいが、これはスプリアス測定ではなく参考データとしてとった。

スプリアス領域

RBW=1kHz 9kHz〜150kHz

RBW=10kHz 150kHz〜7100kHz

RBW=10kHz 7100kHz〜30MHz

-21dBm の高調波。50μW (13dBm) 以下なので合格

RBW=100kHz 30MHz〜71MHz

「ITU-R 勧告SM.329-10における指針」に従って、基本周波数の10倍高調波まで見れば良いことにはなっている。つまり 7.1MHz なら 71MHz まで見れば十分なはず。

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