AD8302 (ログアンプ+位相検出器) を使った系です。
方向性結合器の出力を AD8302 に直接入れるタイプ
方向性結合器から進行波と反射波をとりだし、それを直接AD8302に入れるタイプのものです。
AD8302 にはログアンプであるとともに、2信号間の0〜180度の位相差の測定もできます。
位相差も測っているからリアクタンスも符号もわかると言いたいところですが、AD8302 の位相差は基準に対し0〜180度なので、この構成だと符号の区別はつきません。
AD8302 は AD8307 よりもさらに高価 (AD8302 はログアンプが2個と位相検出器が入っているので当然ですが) なので、リアクタンスの符号がわからないのはかなり残念な構成だと思います。正直、AD8302 を使って実装する価値はなさそうです。
計算
測定値として電圧反射係数 Γ の絶対値と位相角度 α がわかります。ということで反射係数の実部と虚部は簡単に求められます。
Γと伝送路インピーダンス・負荷インピーダンスの関係は
分母を有理化しつつ R + j X の形になるように (rectform()) していきます
ということで の形になったので R と X はそれぞれ
となります。計算上 X の符号は失われていませんが、そもそも最初の位相が正しかとれていないので符号がわかりません。
方向性結合器の出力の進行波側の位相を90度シフトしてから AD8302 に入れるタイプ
基準となる進行波の位相をフェーズシフターで90度進めることで、AD8302 の位相検出範囲を -90〜+90度にし、リアクタンス符号を計れるようにしたタイプです。
負荷インピーダンス自体は直接入れるタイプと同じように計算できます。こちらは符号が有効に出てきます。
広い周波数で正確にフェーズシフターを動かすのが難しいところだと思います。
抵抗ブリッジのリファレンス電圧と負荷電圧を計るタイプ
ブリッジのリファレンス複素電圧と、負荷の複素電圧を計るタイプです。AD8302 の片方には90度位相シフトした元の波形を入力し、位相検出範囲を -90〜+90度 にしています。
位相シフトした基準信号はDDSで作ります。つまりブリッジ入力用の信号源と、基準信号用の信号源とで DDS が2台必要です。しかし DDS なので広い周波数で正確な90度信号を作りだせます。
調整がいらないのが最大のメリットだと思います。
反射係数を直接測っておらず、基準電圧と負荷電圧を測っています。
E_{LOAD} と E_{REF} の絶対値と角度がわかっているので
電圧反射係数 Γ は
あとは上記の複素電圧反射係数から R と X を求める形でいけそうです。