2016年 03月 14日

中華AD8307をデジタル電力計にしてみる

中華AD8307のテストをしてみましたが、これはうまくいけばモジュールとして使えるようにピンヘッダを立てて作りました。

テストした感じでは使えそうなので、まずパワー計として動かしてみることにしました。

といっても、MCUのADCで読んで計算するだけです。

ただ、AD8307 そのままだと入力範囲が -76dBm〜+16dBm と、普段使うには電力範囲が小さいほうに寄りすぎているため、25dB のアッテネータを前段に挿入し、-51dBm〜+41dBm の範囲としました。

耐電力の大きなアッテネータは面倒なので、1/2W 抵抗を使い、定格1W程度、極めて短時間なら10W程度というイメージです。

使用感

実際10W入力すると3秒ぐらいでかなり発熱するのでこわいです。5W ぐらいまでなら〜5秒耐えられそうです。

確度

アッテネータの絶対的な誤差は簡単な校正で消せます (インターセプトが移動してるだけなので) 。AD8307 自体のログとの一致性は±1dB。

ただ、入力周波数によって出力電圧が結構変わりますので、確度を求めるなら周波数カウンタ機能をつけて、周波数も変数にして校正したほうが良さそうです。

例えば10MHzと500MHzだと、出力電圧にほぼ固定で10dB分の差があります (1ケタ!!)。一応、この差は周波数に応じてほぼ固定なので、入力周波数がわかっていれば簡単に補正はできます。

↓ はデータシート記載のものと、実測のもの


今回は周波数を測ってない以上、全域での絶対的な確度はあまり期待できません。

計測できた電力値が実際より大きい分にはあまり問題ではありませんが、実際よりも小さい値が表示されると、これを信じて他の機器につないだときに過大入力になることがあり、よくありません。安全策としては上限周波数で校正をかけることでしょう。

ただし、前段についているアッテネータの特性的に300MHzぐらいが上限です

用途

明確な出力が不明な信号源の場合、直接スペアナに繋ぐまえに、一旦チェックする用として使いたい気持ちです。瞬間的になら10W入力できますし、これなら壊れても痛くありません。

コード

#include <Arduino.h>
#include <Wire.h>
#include <LiquidCrystal_I2C.h>
#include "interval.hpp"

static const float SLOPE = 26.367;
static const float INTERCEPT = -63.51879243;


LiquidCrystal_I2C lcd(0x27, 16, 2);
String formatWatts(const float watts) {
	if (watts < 1e-3) {
		return String(watts * 1e6) + "uW";
	} else
	if (watts < 1e-1) {
		return String(watts * 1e3) + "mW";
	} else {
		return String(watts) + "W ";
	}
}

void setup() {
	Serial.begin(115200);
	Serial.println("init...");

	Wire.begin();

	lcd.begin();
	lcd.backlight();
	lcd.setCursor(0, 0);
	lcd.print("Hello, World");
	lcd.setCursor(0, 1);
	lcd.print("TEST");
}

void loop() {
//	interval<1000>::run([]{
//		Serial.println("1000ms");
//	});

	uint16_t adc_raw = analogRead(0);
	Serial.print("ADC Got = "); Serial.println(adc_raw);
	float adc = static_cast<float>(adc_raw) / 1024 * 5;

	Serial.print("ADC Voltage = "); Serial.println(adc * 1000);

	float dBm = (adc * 1000 / SLOPE) + INTERCEPT;
	Serial.print("dBm = "); Serial.println(round(dBm));

	float watts = pow(10, dBm / 10) / 1000;
	Serial.print("W = "); Serial.println(watts);
	Serial.print("mW = "); Serial.println(watts * 1000);

	lcd.setCursor(0, 1);
	lcd.print(round(dBm));
	lcd.print("dBm");
	lcd.print("                ");

	lcd.setCursor(0, 0);
	lcd.print(formatWatts(watts));
	lcd.print("                ");

	delay(500);
}
2016年 03月 13日

高周波用アッテネータを作ってみる

25dB で SMA 入出力のアッテネータが欲しくなったので作ってみました。アッテネータを作ってみるのは初めてです。

回路

アッテネータの計算機 を使って必要な抵抗値を求め、抵抗計算のサイトでどうやって近い値を作るかを調べ、このようにπ型のアッテネータ回路にしました。

ボードレイアウト

小さくつくりたかったので全部縦に並ぶようにしてみましたが、入出力が近くなるので、こう実装するのはあんまり良くなさそうな気がします。

結果

挿入損失

300MHz ぐらいまではそこそこフラットにみえます。

リターンロス

300MHz ぐらいまでなら SWR=1.2 未満になりそうです。

2016年 03月 12日

中華AD8307を使ってみる

中華AD8307をいくつか手に入れてみたので、ちゃんんと使えるのか実験してみました。というのも、値段的にどう考えてもコピー品だからです (単価50円ぐらい)

回路とボードレイアウト

回路はAD8307のデータシートに記載がある以下の「基本的な接続」の回路ほぼそのままです。電源のデカップリング用の 4.7Ω はフェライトビーズに変え、入力抵抗 52.3Ωは100 // 110Ωで作っています (が、手元に110Ω抵抗がなかったため100 // 220 // 220 Ω)

ボードレイアウトは以下のようにしました。PCB Milling で作るため必ずしも理想的とはいえません。

測定

手元にある信号発生器だと、スペアナのトラッキングジェネレータ出力が一番信用できるので、これを使いました。ただし出力が-20dBm〜0dBmまでを1dB単位でしか出せないので、出力がもうすこし大きくなって飽和近くになったときどうなるかはわかりません。周波数は10MHz固定です。

ということでこのようになりました。確かにログアンプになっているようで、綺麗に dB に対して直線になっています。

傾きは 24mV/dB (= (2230-1750)/20 ), インターセプトは -92.9dBm ぐらいにあります。

AD8307 本来の仕様的にはインターセプトは -87〜-77dBm なのですが、これはずれています。原因はよくわかりません。入力インピーダンスが正確に50Ωになっていない(アンテナアナライザーで測ると約52Ω)影響かもしれません。

追記

500MHz まで段階的にはかりました。

広い範囲にしてみてみると、傾き 25.5mV/dB、インターセプト-87dBm ぐらいに見えます (10MHz時)。こんなもんなのかもしれません。

まとめ

ひとまずログアンプとしては動いているようなので使えそうです。インターセプトのずれは実装の問題なのかICの問題なのかはよくわかりませんのでとりあえず保留としようと思います。自分の場合出力を必ずADCに接続するので、ここが多少ずれていても大丈夫ではあります。

余談

表面実装品のテストにPCB Millingをはじめて使ってみました。PCB Millingとしては、こういう使いかたをするのが一番の目的だったので、ひとまずうまく実験できて良かったです。SOIC は割と足の間隔が広いので、あまり細かいことができないPCB Millingでも十分いけることがわかりました。

2016年 03月 11日

100円ぐらいで売られている中華ラジケータ(アナログパネルメータ)を試す

ちょっと針が動いて楽しいアナログ計が欲しいなと思っても、昨今ではラジケータ(ラジオ用の精度の低い電流計の総称)もかなり高価で、秋葉原だと安くても500円〜という感じです。この値段だと、インターフェイスの味つけ程度のために買おうとは思いません。

ふと思いたって ebay で analog panel meter で検索してみると、100円程度で売られているものがありました。仕様的には AC 0-300V と、かなり高圧のフルスケールのものです。とはいえ、どうせ抵抗が入ってるだけなので、ちょっと改造すれば使えそうだと思い買ってみました。

仕様

見ての通りパネル全面にダイオードと抵抗がついています。簡単にはずせそうで便利ですね。このダイオードと抵抗は無視して、電流計本体のフルスケールと内部抵抗を測りました。

フルスケールはだいたい1500uA(1.5mA)ぐらいのようです。このとき、電圧は 620mV でしたので、内部抵抗は約413Ωです。


あまり格好いいメータとはいえませんが、スケールを貼り替えてカバーを塗装すれば多少マシになるかもしれません。ただ針の振れかたも安っぽく、ヒゲゼンマイのトルクがいまいちという感じがします。

とはいえ、ちょっとしたケースでデジタルPWMに繋いでアナログ表示させてみるみたいなケースでは使えそうです。3.3V なら 1.8kΩ、5V なら 2.9kΩ を直列に繋げばちょうどよさそうです。

AD8307 を 3.3V で動かすときの罠

先日

最初は 3.3V で動かしていたのですが、どうしても途中から出力電圧が上がりませんでした。定格上では 3.3V でも +10dBm までは入力可能のはずなのですが、-2dBm ぐらいから出力が上がらなくなり、全くよくわかりませんでした。

http://lowreal.net/2016/02/22/1

と書きました。これの原因のちゃんと調べてみました。

まずAD8307 のデータシートには以下のような記述があります。

In most applications, the signal is single sided and can be applied to either Pin 1 or Pin 8, with the other pin ac-coupled to ground. Under these conditions, the largest input signal that can be handled by the AD8307 is 10 dBm (sine amplitude of ±1 V) when operating from a 3 V supply; 16 dBm can be handled using a 5 V supply. The full 16 dBm can be achieved for supplies down to 2.7 V, using a fully balanced drive.

要約すると、

  • シングルエンドアプリケーション時 (入力の片方のピンがAD8307のGNDに接続されている場合) は 3V のとき 10dBm までの入力が可能。
  • 差動接続の場合は2.7Vでも16dBmまでの入力が可能

と書いてあります。

これを見て 3V でも +10dBm まで使えそうだな、と思ってしまいました。

出力が頭うちに

しかし実際 3.3V で使ってみると、10dBm 入力しても想定した出力がでません。よくよく調べてみると、英語版の最新データシートだと以下のような記述がありました。

Note that while the AD8307 can operate down to supply voltages of 2.7 V, the output voltage limit is reduced when the supply drops below 4 V. This characteristic is the result of necessary headroom requirements, approximately two VBE drops, in the design of the output stage.

要約すると 出力回路に2つのトランジスタがあるので、4V未満ではこれらの 分出力が低下するよ、という感じのようです。出力回路の制限なわけですね。

が 0.7V とすれば2つで1.4V、電源電圧が3.3Vなら、出力電圧は1.9Vまで低減されます。これを入力 dBm に換算すると-8dBm付近になります (実際の によります)。

が -84 dBm、 が 25mV/dB で が 1.9Vだと -8dBm になります。

ということで、実測だと 3.3V 時に出力が頭うちになるのは完全に「仕様」なのでした。

結論

つまり、3.3V で使う場合で、-8dBm 以上入力させたいなら、傾きの調整が必須なのです。

傾きを 20mV/dB にすれば、 1.9V で +11dBm になります。20mV/dB に設定する方法はデータシートにそのまま載っていて、32.4kΩの抵抗と50kΩの可変抵抗を直列にして AD9807 の OUT と COM に接続 (内部の出力抵抗と並列に接続) して調整すれば良いようです。

といっても調整するのが面倒なんですが…

はぁほんと心底 Spring とか嫌だ…… なんでこんなクソなことをしないといけないのか。普通に書きたい……

2016年 03月 09日

「コイルとコンデンサは電圧と電流の位相差を90度進めさせる/遅れさせる」とはどういう意味なのか

「コイルとコンデンサは電圧と電流の位相差を90度進めさせる/遅れさせる」という説明を良く見ますが、どうも直感的に理解できていませんでした。電圧と電流の位相差が±90度か0度しかとらないという話ではないだろうし、「途中の位相はないの?」と思ってしまうのです。この説明の意味がわからない、という意味です。

疑問の詳細

コイルとコンデンサの組合せで共振回路をつくった場合、電圧と電流の位相差はゼロになるはずです。ではすこしだけ共振していない場合はどうなるのでしょうか? 現実的には殆どの場合共振していないはずです。

「すこしだけ共振していない状態」であっても回路全体としてはインダクティブであるかキャパシティブであるかのどちらかであり、±90度の位相差は起こっているはずです。

でも現実問題としては回路全体で観測できる電圧と電流の位相差は必ずしも±90度ではありません。少しだけ共振していない場合は殆ど位相はずれていません。

途中の位相はどこいった?

式を使って「このように位相がずれます!!」というのは置いといて「途中の位相はどこいった?」という疑問だけ解決します。


純リアクタンス成分に関していえば、確かに±90度の位相差を常に起こしています。これはコイルとコンデンサだけで構成された回路なら回路全体に対してもあてはまります。「少しでも」コイルやコンデンサがあれば必ず±90度の位相差が起こっています。コイルとコンデンサの複合回路でも、共振していなければ必ず±90度の位相差が起きます。これはシミュレーションでも確認できます。

しかし実際の観測される位相は抵抗成分も含めて考える必要があります。これにより回路全体を見たときの位相差は任意の角度をとります。

全体として、抵抗成分が少なければ少ないほど-90度か+90度に近付き、リアクタンス成分が少なければ少ないほど、0度に近付いていきます。

複素平面上で見たときも、純リアクタンス成分は全体としても±90度にしかならないが、抵抗が加わった瞬間、合成された絶対値はいろんな別の角度をとりうることがわかります。

つまり

「コイルとコンデンサは電圧と電流の位相差を90度進めさせる/遅れさせる」というような説明は、純粋にそのコンポーネントの理想的な電圧の電流の関係をいっていて、抵抗成分を含めたことは言ってないわけでした。この説明、何度も何度も目にしてきたのに、何を言ってるのかわかりませんでしたが (途中の位相もあるよな?と思っていた)、ようやく意味がわかった気がします。

そして思いますが、この説明の仕方は筋が悪いと思います。現実のコイルやコンデンサには必ず無視できないほどの抵抗成分がありますから、これらのコンポーネントだけで回路を構成したとしても必ずしも位相差は±90度のどちらかになるというわけではないはずです。コイルやコンデンサと言うのではなくて「純リアクタンス成分は〜」とかで書いたほうが正確だと思いました。

AーDコンバータ活用成功のかぎ―変換のメカニズムと性能の引き出し方 (アナログ・デザイン・シリーズ) - 松井 邦彦

松井 邦彦

5.0 / 5.0

これを読みました。ほぼデジタル回路しか触らないぞと決めていたとしても避けて通れないのはADCです。

ΔΣ型や逐次比較型の説明ももちろんですが、他の構成(全く知らなかった)のADCについても解説がありました。

一番面白いというか役に立ちそうなのは精度に関するところで、何が支配的になって精度に関わってくるか、補正しにくい誤差はデータシートのどこの項目なのかが詳しく書いてあります。こういうノウハウはなかなか知る機会がないのでわくわくしました。

「何が支配的で何に影響を与えるか」は何を考えるときにも大事なところで、「コツ」の言語化だと思うので、こういうことがひたすら書かれた書籍を読みたいところです。